日々の暮らし

時間を積み重ねて
洗練された
自分好みの暮らし方

上原 未嗣さん
フォトグラファー

ニーチェアエックスのラインアップの中でも、立ち座りが楽な座面高で、より軽量でコンパクトな形状の椅子として1980年に誕生した「ニーチェアエックス 80」。今回は、「ニーチェアエックス 80」を暮らしに取り入れたばかりの3組のクリエイターの自宅をたずねた。彼らの個性あふれる自由なスタイルにとけ込んだ「ニーチェアエックス 80」のある暮らしは、まさに三者三様。そして、リラックスチェアの使い心地をもっと自由で豊かなものにしてくれた。


vol.1 セラミックアーティスト「アヤ・クヴァジエさん」


「ニーチェアエックスは3台持っていますが、ニーチェアエックス 80を迎えるのは初めて。試しに座ったことは何度もあって、その頃からずっと思っていたのですが、とにかく本が読みやすいんです。“読書のための椅子”なんじゃないかと思うくらい、他のモデルと用途が全然違う気がします」

フォトグラファーの上原未嗣さんは、本コラムをはじめ、これまでニーチェアエックスの撮影を数多くおこなってきた方。ニーチェアエックスのあるさまざまな人やシーンを撮ってきたからこそわかる魅力や、彼ならではの解釈がある。そして、4年ほど暮らす東京郊外にある見晴らしのよい部屋のインテリアも、ようやく理想の形に整ってきたようだ。

「一度広いところに引っ越したいなと思って、この物件に住み始めました。最近やっと気に入った飾り棚を見つけて、それが届いたばかり。以前からゆっくり休みたいときにはニーチェアエックスに座るのが習慣だったのですが、今はこの棚を眺めながら過ごしています。一番リラックスして座る時の眺めを、より気持ちのよいものにしたかったんです。仕事柄なのか、高さがあるもので奥が見えなくならないようにとか、視界の導線やサイズ感はすごく気にしますね」

もともと二段重ねで販売されていたというこの飾り棚。高さやニーチェアエックスに座った時のイメージを検証してきたものの、いざ部屋に導入してみるとあまり納得がいかず、試しに横並びで設置したところ「完璧にフィット」したのだそう。自分好みの抜けや緻密な調整は、まさにフォトグラファーならではの視点のようにも感じられる。そんなふうに計算しつくされて設置した家具のあちこちには、民芸品や多国籍なオブジェなど、人の手仕事が感じられるものが飾られている。それらとの出会い方もまた面白い。

「旅や出張など、行った先で偶然見つけることも多いですね。たとえば、鎌倉でふらっと入った洋品店のレジの奥で目に止まった太鼓。これは30年間売れずに残っていたそうです(笑)。また、旅行で訪れた下田で気に入った椅子は、旅館の方に売っている店を教えてもらって買いに行ったりもしました」

2階の一室は上原さんのコレクションが集まった、まるでギャラリーのような空間。古い調度品がレイアウトされたモノトーンのインテリアに、ブルーのニーチェアエックス 80が加わった。

「このブルーのように、鮮やかな色を家具に取り入れることは今までなかったですね。それ以外が主に黒や白で単調なトーンだったので、逆に映えるかなと思って選びました。暗い色を選んでいたら、全然違う印象の部屋になったと思います。ここでニーチェアエックス 80に座って読書をします。やはり1階に置いたニーチェアエックスとは違って、肘をちょうどよい高さに置けるので、読み続けていてもストレスがないんです」

くつろぐため、読書をするため、仕事をするため、と目的や過ごし方に合わせて作られた上原さんのこだわりのスペースの中で、もっとも永く大切にしてきたものはと尋ねると、どれも同じだけ愛着があり、到底選びきれないのだという。

「どれも捨てがたく、選べません(笑)。むしろ、いらないものがこの家にはひとつもないかな。引っ越しなどのきっかけがあったとしても、誰かに譲るようなものは、ないかもしれないです」

時間をかけて探し続けてようやく手にしたものも、旅先で偶然直感的に手にしたものも、すべてに同じだけの愛着を持てるということ。それは自分の感性を信じ、少しずつ磨いてきたからできることなのかもしれない。この先たとえ場所やインテリアの印象が変わっても、彼の暮らしにニーチェアエックスが居続ける風景が、目に浮かんでくる。

Mitsugu Uehara

1989年 山口県生まれ。フランス・パリへの渡仏をきっかけに本格的に写真を学ぶ。 アジアやヨーロッパ諸国を中心に旅をしながら写真を撮り、現在は都内でフリーランスとして活動する。

mitsuguuehara.com/