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暮らす

ニーチェアエックスの
ある風景

NIPPONIA 小菅 源流の村
SKETCH代表
関根将吾さん

美しい多摩川源流と、ありのままの原生林がいまも残る山梨県小菅村。

都心から車で約2時間。人口約700人が暮らす小さな村の、地域全体を一つの宿に見立てた分散型の古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」では、里山の原風景を堪能し、地元で育てられた食材を味わい、まるで村人の一人のように滞在することができます。2020年8月には大小2つの新棟がオープンし、客室でくつろぐための椅子としてニーチェアエックスが導入されています。

そこで今回は、空間のクリエイティブディレクターとして同ホテル新棟の企画構想、インテリアデザイン、コーディネートまでを手掛けたSKETCH代表の関根将吾さんを訪ね、居心地の良い空間づくりやインテリアとの向き合い方、時を越えて愛されるものの共通点などを伺いました。

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街に開かれた新しい形のフォトスタジオ「クッポグラフィー 駒沢公園スタジオ」

“その場「らしさ」を掘り下げて、空間に取り入れる。”

平日休日を問わず多くの人で賑わう東京の駒沢公園。そこから等々力方面に向かって15分ほど歩くと「クッポグラフィー駒沢公園スタジオ」というフォトスタジオが見えてきます。路面にはコーヒーショップが併設されていて、月曜日には週末の撮影で使用したお花の販売も。スタジオの利用者以外でも気軽に立ち寄ることができ、この日もコーヒーを片手にお客様とスタッフとが談笑する姿がありました。

「この場所のテーマは、公園なんです。人生の節目や思い出を残したり、未来に繋ぐのが写真だとして、日常的な暮らしの場である街にどうやってひらいていくか。フォトスタジオの在り方を考えたときに、街のシンボルである駒沢公園とこの場所をつなげる何かができないかと思ったんです」。

店内を見回していると、そう声を掛けてくれたのがSKETCH代表の関根将吾さん。このフォトスタジオの企画構想段階から携わっており、今回お話を伺うにあたってこの場所を紹介してくれました。

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2020年6月のオープン以来、ご近所さんや街を行き交う人たちで連日賑わう店内

「クッポグラフィーの代表でフォトグラファーの久保さんと話を重ねていくうちにコンセプトが生まれて、じゃあクッポグラフィーらしさって何だろう、この街らしさって何だろうと掘り下げて空間に取り入れていきました。自分でアイデアを構築していくこともあれば、『こういう空間を作りたいんだったらこの設計者やグラフィックデザイナー、空間に飾るアートはこのアーティストに依頼しましょう』といったようにキュレーターの役割を担うこともあります」。

関根さんはデザイン会社でインテリアのデザインやコーディネート、空間ディレクションに携わる傍ら、個人ワークとしてSKETCHでの活動を続けてきましたが、今年のはじめに独立。その大きな転機のひとつとなったのが『NIPPONIA 小菅 源流の村』のプロジェクトでした。

「支配人を務める夫婦が僕の後輩だったことが、きっかけです。もともとホテルに勤めていて結婚を機にオーストラリアで暮らしていた彼らが日本に帰国してホテルの立ち上げにイチから関わる中で、空間のクリエイティブディレクターの候補として、僕の名前を挙げてくれたんです」。

「夫婦で移住までして、そこで働くと言っている。人生をかけている覚悟が伝わってきたので2人のためにもいい空間をつくりたいという想いで取り組みました。一度作ってしまった空間はなかなか変えられないですし、それで不便が生じたときに矢面に立つのは最前線に立つ2人ですよね。どれだけ事前に想像して企画の段階で考えられるか、形にできるかで、仕上がりやホテルでの居心地が左右されるということを強く感じました」。

“お客様目線からはじめることで見えてきた
デザイン・設計の理想的な在り方。”

「『NIPPONIA 小菅 源流の村』は、地域活性化事業を手掛ける「さとゆめ」と「NOTE」と小菅村の3社が合弁会社をつくって開業したホテルなのですが、ここに辿り着くまでに7年間、「さとゆめ」が小菅村をバックアップしながら道の駅の開業など、村に足を運ぶ目的の創出に取り組んでこられたんです。ただ、この村にあった民宿が経営者の高齢化のために徐々に閉まりはじめていて、日帰りでは楽しいところだけど泊まるとしたら古い宿しかないという状況で。過疎化と空き家の課題解決と、観光資源を活かせるモデルとしてホテル事業がスタートし、プロジェクトが進む中で声を掛けていただきました」。

関根さんがプロジェクトに参加した当初はこういったホテルの開発経験者が少なく、設計やデザインはもちろん、そこでどのように人が過ごすかは何も決まっていない状況だったのだそう。

「ありがたいことに、僕はデザインの仕事をしながらVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)やサービス、施設の運営にも関わった経験があったので、運営側と設計デザイン側の両方の視点に立つことができたんです。それは、設計者のやり方とも運営者のやり方とも違っていて。オープン後の空間の在り方や、そこでの過ごし方など、先にお客様目線で課題の洗い出しをしてから設計やデザインで解決していくというフローが組めることで、多くのことがクリアになったんです。このプロジェクトでは、その過程を経てこそ生まれるデザインがあるということも実感しました」

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NIPPONIA 小菅 源流の村「崖の家」の大きな窓からは、壮大なマウンテンビューが望める

例えば、山と渓谷を見渡せる崖の上に佇む『崖の家』。

「設計やデザインが決まる前から『ここにみんなで座って、同じ景色を眺めながら楽しく食事ができたらいいよね』というイメージを先に引き出して話せていたんです。だから柱を抜いて、梁を飛ばして、景観を確保して。カウンターキッチンの向きも斜めに振っていて、普通に真横に作るんじゃなくて、どこに座ってもこのマウンテンビューが目に入るようにするといった思い切った決断に踏み切ることができました。

オーナーとしてはその圧倒的な景観を活かしたい、設計者としては構造上こうあるべきという主張が対立しがちなところを『お客様の目線に立って一番いい状態でつくりたい』というお題を設定するところから考えると、どうやったら構造上それが実現できるのか、という議論からはじめられる。限られた条件の中で試行錯誤を繰り返して、とことん妥協せずにつくる現場の面白さがありましたね」。

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モダンな空間の中に、村の歴史と暮らしを感じられる「大家」のラウンジ

村の玄関口とも言える、名家の邸宅を改修した『大家』は、
築150年超の歴史を誇る建物。

「村の人たちから「大家」って呼ばれて、親しまれていた家なんです。昔、村ではじめてのテレビが入ったのもここ。村のみんながこの座敷に集まって、力道山のプロレス中継とかを熱狂しながら観ていたなんて話をおじいちゃんやおばあちゃんから聞いて。そういう大切な場所なんだということを知ったからこそ、この空間は村に開けた場所にしたいなと思ってつくりました。

でも、そのままちゃぶ台と座布団をまた置いてというのでは、当時の景色を再現するだけ。食事をしたり、お茶をしたり、みんなでテーブルを囲むという要素だけを残して、インテリアのコーディネートや見せ方は一新することにしました。村の人から聞いた話からその場の在り方を定義すると、守る部分と変えていく部分が見えてきて、それをどうインテリアデザインとコーディネートで形にするかというプロセスを踏むことを意識しました」

『NIPPONIA 小菅 源流の村』をはじめ、これまでに携わったプロジェクトを振り返ってみて関根さんが感じたのは、オープン後に起こりがちな多くの課題や問題は企画構想とデザインの段階で解決できるということ。

「オーナーはあくまで経営者であり運営者。それをかたちにする設計者、建設や施工の方、それぞれにやっている仕事も違えば、言語も違う。建築の世界、とりわけ日本では、その間に立って入る人間が少ないということに気がついたんです。専門性の高い人達がそれぞれのプロフェッショナルを追求するのはとても素晴らしいことなんですけれど、それぞれが自分軸で動いてしまうことでこぼれ落ちてしまうことや、本質を見失ってしまうこともある。それを拾い上げるのが僕の仕事だと思っています」。

例えば、ホテルで提供されるフードもその空間における景色を構成する要素の一つだと関根さんは考えます。「空間をデザインして終わりというよりは、そこに食器が置かれて、食事をする人たちの光景までを考えて、だからこれが良いよねと決めていくような過程を大切にしたいんです。設計者だけではなかなか手が回らないことも多い部分なので、そこまで一緒に考えて伴走するって難しいことだからこそ、僕はそこに力を入れていきたいんです」

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寝室にニーチェアエックスを導入したのは「この景色を楽しんでほしいから」

“自然風景と「つながる」ために必要だった
ニーチェアエックスでしか得られない、あの感覚。”

「700人の村が一つのホテルに」をコンセプトに、村の風景や暮らしを感じられる体験を徹底して提供されている『NIPPONIA 小菅 源流の村』。そこにニーチェアエックスを導入することにした理由も聞いてみました。

「人とモノ、そして空間をつなぐことを意識して、つくられていますよね。例えばニーチェアエックスに腰を掛けた時の視点の低さだったり、シートに身を委ねたときの、あのゆったりとした感覚でしか得られない体験があると思ったんです。

当初はソファーを置くことも考えたのですが、それだと完全に気が抜けちゃう気がして。完全に脱力するならベッドでいいし、この景色を楽しんでほしいからリラックスしすぎない椅子が良かった。本を読むときとか、お風呂から上がって少し考え事をするときとか、体の緊張を緩めながらも意識は研ぎ澄まされていくような。その領域に連れて行ってくれるということがとても重要でした」。

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ニーチェアエックスを媒介に、視覚と触覚から大自然を体感することができる

『崖の家』では、ニーチェアエックスの特長が思わぬ効果を発揮したこんなエピソードも。

「当初は、崖の上に建てた部屋の中に、また斜面を作りたかったんです。崖の角度を計算して、室内にいながらその傾斜を体感できるような。もともと畑のあった場所なので、村の人達はきっと畑仕事の合間に草が茂っている斜面に寝そべって休憩したり、おにぎりを食べたりしたんじゃないかと思ったのがはじまりで、彼らが寝っ転がって眺めていたであろう山の景色と感覚をここで味わってほしくて。でも、プロジェクトを進める中で実現には至らなかったんです。ところが、そこにニーチェアエックスを置いてみると、座面の角度と崖に座って眺める景色とがとても近いことが分かって! だから、ニーチェアエックスには僕の想いを叶えてもらったような、感慨深さもあるんです」

ニーチェアエックスに腰掛けるお客様を見ていると、肘かけを撫でている人が多いことに気が付いたそう。 「僕もニーチェアエックスの肘かけがすごく好きなんですよ。とくに50周年モデルはオイル仕上げなので、触った時に木の感触そのものを味わいながらリラックスできます。 つい肘かけを握りたくなるのって、きっと無意識だけれど意味があると思うんです。目の前に広がる山には生きた木が並んでいて、樹齢の差はあれど、肘かけに形を変えた木が自分の手元にある。視覚的に木の存在を感じながらさらに木に触れることで、ガラスを一枚隔てながら本能的に自然を感じられるというのは、なんだかいい体験ですよね」。

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「無意識に撫でているお客様も多い」というニーチェアエックスの肘かけ

“愛着を宿すモノづくり、空間づくりに必要なのは、
温かみを感じさせるエッセンス。”

仕事柄、アンティークや古道具に出会う機会も多い関根さん。時代を越えて長く残るモノと、そうでないモノには「愛着が湧くかどうか」の違いがあるといいます。

「人の存在も同じで、ただ美しいとか、格好良いってだけでは飽きてしまうのが人間の性だと思うんですけれど、有名だろうが無名だろうが、そこに何か愛嬌がなければずっと側に置いておきたいとはならないですよね。

長く愛されるものは、アンティークでもヴィンテージでも、側に置いておきたい、大切にしたいというポジティブな感情が生まれてくるもの、そうやって愛着が宿っているモノかなと思います」

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「人と対話ができるようなモノづくり、空間づくりをしていきたい」と関根さん

「アップサイクルとかリノベーションって、ある意味そういう失われてしまった部分に愛着を宿す仕事だと僕は思っていて。人から愛されなくなってしまったものが、また愛されるようにするにはどうしたらいいかということを考えて息を吹き込む。金継ぎとかも、そうですけれど、壊れてしまったものを修繕するだけではなくて、そこに温かみを感じさせるエッセンスをプラスして深化させていくことなんじゃないかと思うんです」。

関根さん自身が手掛ける場所も、また然り。「ほっと息が抜けたり、温かみに包まれたり。言葉にしなくてもいいんです。そこで何気なく過ごしている人のそういう表情が見えた時に、ああ良かったなと嬉しくなります。モノは喋ることはできないけれど、そこに血が通っていて、人と対話ができるようなモノづくり、空間づくりをしていきたいと思っています。理由はよく分からないけれど良かったなとか、あの感じが好きだなとか。

気温とか、匂いとか、何かに触れた時にふと、居心地の良かった場所を思い出す瞬間ってないですか?

そういう記憶に残るような場所をつくれるようになるのが、今後の目標です」。

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関根将吾

Shogo Sekine

描いた想いを空間にするクリエイティブディレクター。国内外でVMDや企画、インテリアデザインとコーディネート、空間ディレクションの経験を積み、2020年に独立。 独自の視点と思考で、ホテル・カフェ・オフィス・ショップなどのプロジェクトに伴走し続けている。

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