日々の暮らし

ストーリーのある
古いものに囲まれながら
自分の手で育てはじめる
ヴィンテージ

アヤ・クヴァジエさん
セラミックアーティスト

ニーチェアエックスのラインアップの中でも、立ち座りが楽な座面高で、より軽量でコンパクトな形状の椅子として1980年に誕生した「ニーチェアエックス 80」。今回は、「ニーチェアエックス 80」を暮らしに取り入れたばかりの3組のクリエイターの自宅をたずねた。彼らの個性あふれる自由なスタイルにとけ込んだ「ニーチェアエックス 80」のある暮らしは、まさに三者三様。そして、リラックスチェアの使い心地をもっと自由で豊かなものにしてくれた。


「椅子はいろいろ持っていますが、ニーチェアエックスのようなリラックスチェアを選んだのは初めて。最初は正直、クロス1枚だし、座り心地はどうなんだろうと思っていたのですが、実際座ってみると最高。張り感も、身体にしっくり馴染むニーチェアエックス 80の肘かけの安定感もすごくよいです」

セラミックアーティストとして活動するアヤ・クヴァジエさん。日本人の母とフランス人の父のもと日本で生まれ育ち、大学進学をきっかけにフランスへと渡った。パリで就職した後に陶芸と出会い、アーティストとしての活動をはじめ、再び日本に戻り東京を拠点にするようになったのは、約5年前のこと。

「もともと生活雑貨が好きで、収集癖もあったので、いつか自分でも作ってみたいなとは思っていたんです。そんな時、パリで陶芸をしていた友人に誘われたのがきっかけでした。マリーという陶芸家のスタジオを間借りさせてもらって、土も彼女のものを使わせてもらっていました。当時は、黒や赤っぽい色で器を作っていました。パリに住んでいたし、いわゆる“日本のワビサビ”を感じるようなものに惹かれていたんだと思います。日本に戻ってきたときは、土も釉薬もどうしていくかまだわからない状況だったので、とりあえず白に統一して作ってみて、そのまま今のスタイルに至るという感じです。その時住んでいた家は畳の部屋で、この家より更に和のテイストが強かったのですが、その雰囲気にも白い器がよく合うなと感じました」

現在は引っ越したばかりという、都内の閑静な住宅地にある一軒家に、パートナーと猫と一緒に暮らしている。このダークブラウンの肘かけにグレーのファブリックという組み合わせのニーチェアエックス 80も、この家に引っ越してきてから選んだものだ。

「色は迷いましたが、この家にいちばん合うかなと思って。今はリビングに置いていますが、2階の和室やゲストルームに置いてもよさそう。畳との相性もよいですよね。猫も気に入ったみたいで、初日からニーチェアの取り合い(笑)。読書をするのにもぴったりです」

もともとは建築家の自邸だったというこの家。手入れが行き届いた庭や木製の造作家具、明るいサンルームなど、ここで心地よく暮らすために備えられたであろうポイントが家の随所に感じられる。そしてその空間に、フランスや日本、さまざまな土地でアヤさんが見つけてきた家具やオブジェが美しく添えられており、そこには彼女らしい視点があった。

「インテリアは古いものがほとんどで、新しいものを買うことはあまりないですね。ストーリー性があるものの方が愛着がわくし、そういうものは、たとえ誰かに手渡されたとしても、きっとあり続けるんだろうなと思うんです。この家もまさにそう。建築家の方が自分のために建てた家で、とても気に入っていたそうです。だからこそ、次に住む人にもその想いをちゃんと受け継いで使ってほしいというのが伝わってきました。たくさん物件を見てきた中で、この家に呼ばれた気がしたんです」

窓辺に何気なく置かれている小さなオブジェにも、抜群のセンスとこだわりが感じられ、「こんな素敵なもの、一体どこで見つけてきたのですか?」 と尋ねると「このテーブルはフランスの蚤の市で10ユーロ!」「このランプはフリマアプリで見つけたの」と、かなりの買い物上手であることにも脱帽。アヤさんがこれまでさまざまな場所でたくさんのものを見て、愛着を持って選んできたのだから、いいものと出会えるのも当然だろう。そんな彼女が永く愛着を持っているものについて、「ひとつに選べない」と前置きしながらも、教えてくれた。

「フランス・リールの蚤の市で見つけたオットマンは、猫用にかわいいなと思って買ったもの。売ってくれたのは、もともとそれを使っていたおばあちゃん。その後、お孫さんが受け継いで使っていたそうですが、もう使わなくなったタイミングで私が偶然出会いました。当時住んでいたパリのアパートのインテリアにぴったりだったから買ったのですが、日本の家にも意外と合って、面白いなって。いつも猫が乗っていて私は使わないのですが(笑)、ずっと視界にはあるんです」

どこかで誰かが紡いできたストーリーを受け継ぎ、自分のストーリーを重ねていく。そんな古いものを所有するたのしさを教えてくれたアヤさん。それと同時に、自分がこれから続くストーリーを一番最初に描くこともきっとたのしいに違いない。彼女が作る器、そしてあらたに加わったニーチェアエックスが、いつかヴィンテージとなって次の誰かに渡ることを夢見て。

Aya Courvoisier

1993年、福島県生まれ。大学進学時に渡仏。パリで陶芸技術を学ぶ。骨董品やヴィンテージの買い付け、現地コーディネーターとして働く。2019年に日本に帰国し、現在は東京を拠点にセラミックアーティストとして活動する。

https://www.instagram.com/ayacourvoisier/