ニーチェアエックスの歴史

1970年に誕生し、現在まで続く
ニーチェアエックスの歴史

ニーチェアエックスの歴史

1970年、有限会社ニーファニチアより発売された「ニーチェアエックス」。
2013年に同社が椅子製造中止を発表し、
2014年から、株式会社藤栄がその製造・販売を引き継いだ。

ここでは、ニーチェアエックスの誕生から、
藤栄によるニーチェアエックス継承と発展のあゆみを紹介する。

1956
新居 猛
「木製折り畳み小椅子」を試作
1970
有限会社ニーファニチアより、
ニーチェアエックス発売
1972
有限会社ニーファニチアより、
ニーチェアエックス ロッキング、
ニーチェアエックス オットマン発売
1980
有限会社ニーファニチアより、
ニーチェアX 80発売
2005
株式会社藤栄製造の
ライセンス商品「ニーチェアF」発売
2013
有限会社ニーファニチアが、
椅子の製造を中止
2014
株式会社藤栄がニーチェア事業を継承
藤栄製造による、ニーチェアエックス、
ニーチェアエックス ロッキング、
ニーチェアエックス オットマン発売
2017
ニーチェアエックス
Shikiri発売
2019
ニーチェアエックス
50周年記念モデルを限定生産にて発売
2020
ニーチェアエックス誕生50周年
ニーチェアエックス『コンセプトブック』発刊
2022
ニーチェアエックス80復刻発売
ニーチェアエックス「リペアサービス」開始
ニーチェアエックス「オイルフィニッシュ」を限定生産にて発売
PREFACE
1956 – 1970

ニーチェアエックスが
誕生するまで

木製折り畳み小椅子

新居 猛は徳島の職業補導所木工コースを経て、1952年より家具の製造販売を開始。椅子の初作は1956年に発表した「木製折り畳み小椅子」。三越で開催された「第9回中小企業輸出振興展」で振興賞を受賞した。

東京国際家具見本市内で開催された特別イベント「フォールディング・ファニチュア展」での「新居 猛」コーナーのようす

新居が初作から変わらず大切にしてきた椅子づくりの信念は、座りやすく丈夫で安いこと。特に、椅子の価格を抑える為に意識したのが輸送コスト。通常の椅子を荷造りして送るのは「かさばって空気を送るようなもの」と、荷姿を小さくするために考え出したのが“折り畳み椅子”であり、生涯かけて向き合ったテーマだ。

その理想形を求めつづけ、試作と改良を重ねた結果、1970年に「ニーチェアエックス」が誕生する。

CHAPTER 1
1970 – 2005

藤栄とニーチェアエックスの
かかわり

有限会社ニーファニチアの工場を案内する新居 猛(右)

株式会社藤栄は、1945年創業の生活用品・インテリア・家具の製造、卸売り、小売りを営む会社である。ニーチェアエックスは、1970年発売当初から取り扱いを行っている。

1990年代に入り、バブル崩壊による景気の後退で、家具の業態にも大きな変化が生じた。百貨店が家具売り場を縮小し、街の家具店も廃業が進み、製品を売る場自体がなくなっていったが、従来の販売先を見直し、生活雑貨の大型販売店など、専門店以外に販売をシフトしていった。

時代の変化を受けながらも、『この素晴らしい椅子をお客様に届けることで、豊かな暮らしの創造に貢献したい』と、途切れることなく販売を続けた。

ライセンス製品「ニーチェアF」の開発

(左)ニーチェア F (右)ニーチェアF ロッキング

2005年に正規ライセンス製品「ニーチェアF」を発売。「ニーチェア」の名付け親で監修者の、武蔵野美術大学名誉教授・島崎 信氏の協力のもと開発した。ニーチェアエックスと同型でありながら、シートカラーのバリエーションや販路を変え、これまでとは違う購買層にアプローチした。

CHAPTER 2
2013 – 2017

ニーチェアエックスの
製造・販売事業を継承

IFFT/インテリア ライフスタイル リビングへの出展

2013年9月、有限会社ニーファニチアから、椅子の製造を中止するとの知らせが届く。突然のことに大きな衝撃を受けながらも、『世界に誇る日本の椅子をここで途絶えさせてはいけない』と、40年以上ともに歩んできた企業としての使命感を強くする。

この想いは、これまでニーチェアエックスの販売に関わってきた者たちの間で共有されてきた理念でもあった。藤栄社内の議事録には『新居 猛氏の名を汚すことなく、色々な状況に置いても、絶対に火を絶やさない』との言葉が残されている。

すでに故人となっていた新居に代わり、長年ニーチェアエックスと併走されてきた島崎氏に監修を受けながら、2014年、藤栄は正規製造・販売元としてニーチェアエックスの歴史を引き継いだ。

国内各地の技術力を結集し、
ものづくりの意志を受け継ぐ

ニーチェアエックスには、設計図が残されていない。そのため製造は、現物を分析し一から開発する必要があった。ニーチェアエックスの部品はわずか6種類とシンプルな構成だが、座り心地やフォルムの美しさに直結するため、部品一つひとつにごまかしが利かない。製造には、高い技術力が求められた。また、安定した市場供給のためには、生産力も重要となる。国内一貫製造とすることで、これらの課題をクリアした。

『座り心地を落とさず、とにかく安く、道具のように役立ってこそ椅子』という新居 猛の意志を受け継いだ各地のつくり手たちは、さらなる品質向上のために今日も開発を続け、新しい提案を届けてくれる。

世界を視野に。新シリーズ
「ニーチェアエックス Shikiri」の誕生

ニーチェアエックスShikiri

輸送コスト削減のため、ノックダウン(組み立て)式を採用したことで海外輸出も進み、世界でも名作椅子として知られているニーチェアエックス。あらためて、海外市場や現代の暮らしに合う、新しい選択肢を提案しようと企画されたのが、2017年発売の「ニーチェアエックス Shikiri」である。

コンセプトは、古来日本建築で使われてきた“しきり”。デザインを手掛けた河東 梨香氏は、ニーチェアエックスを日本の住環境の写しと捉え、彼女のもう一つのルーツであるデンマークのデザインに影響を及ぼしてきた日本建築の美と、内と外、自然と調和する暮らしを大切にする両国に共通する空気感を、グレーを基調としたテキスタイルデザインで繊細に表現した。

CHAPTER 3
2019 – 2022

次の50年につなげる“覚悟”。
50周年を記念した2つの取り組み

ニーチェアエックス 50周年記念モデル

2019年、翌年に誕生50周年を控え「ニーチェアエックス 50周年記念モデル」を数量限定で発売。「Kinari(生成り)」と「Kuro(黒)」2種類の生地と、節や木目のある素材を肘かけに採用。“素材そのもの”の風合いを生かした表現は、確かな技術力がなければ生み出せない。

優れたつくり手たちとともに、次の50年に歴史をつなげていく覚悟を示した。さらに2020年には、50年の歴史とものづくりの現場から暮らしの風景までを一冊にまとめたコンセプトブックを発売。ニーチェア事業継承のコンセプトに定めた「継承と発展」の道のりを紹介した。

シリーズで最もコンパクトな折り畳み椅子
「ニーチェアエックス 80」復刻発売

ニーチェアエックス 80

2022年、シリーズ史上最も軽量でコンパクトな「ニーチェアエックス 80」を発売。そのきっかけは、永年の愛用者からの修理依頼だった。修理のため送られてきた80のフォルムの美しさと座り心地のよさから、ぜひ復刻したいと考えた。しかし当時はニーチェアエックスの生産能力や品質の維持向上が確立できておらず、新しい製品の開発に取り組むことは難しかった。

そこから数年、社会が大きく変化し、ライフスタイルもさらに多様化した。生産体制が安定してきたことと、新しい暮らしに寄り添う道具としての適性を感じ、復刻発売に踏みきった。

愛着あるものとの「豊かな暮らし」を続けて
もらうために。「リペアサービス」の開始

2022年、ニーチェアエックス「リペアサービス 」を開始。前身となる「リペアプログラム」を2020年から行ってきたが、想定以上にご要望があり、サポート内容を強化。

ニーチェアエックスは組み立て・分解が容易な構造で、作業も市販の工具のみで行えるよう考え抜かれているため、基本的な修繕は部品交換で可能。作業が不得手な方のために、専門担当者による修理も行っている。愛着あるものを永く使い続けたいというご要望に、これからも応え続けていく。