こだわりのものづくり

ニーチェアエックスの
ものづくり
「パイプフレーム・組み立て」

“「バラバラに分解」からはじまった
技術継承までの長い道のり”

頭から背、腰までを支えるように計算されたシートパイプ。床を傷つけないよう、緩やかなU字型のカーブが施された脚部。ニーチェアエックスの骨格ともいえるパイプは現在、「ニーチェアエックス」「ニーチェアエックス ロッキング 」それぞれの曲げ加工を行う二つの工場で製造されている。

初期の生産を手掛けていた徳島工場から製造を受け継いだ当時を知る担当者は「ニーチェアを分解して、ステンレスの厚み、曲げの角度などを精密に計算することからはじめました」と当時を振り返る。ニーチェアシリーズには、各部品の仕様や寸法を示す設計図が残されていなかったためだ。

“新居 猛の美意識が導く
妥協なきものづくり”

しかし彼らは、その構造を紐解き、理解するほどに、新居猛の豊かな創造性に衝撃を受けたという。「肘かけの溝にパイプがおさまる絶妙な角度。本体フレームの曲げ具合も、きっと何度も調整されたはず。何より1本のネジで、肘かけとパイプを固定するという発想は、私たちにはとても思い付きません」。

ニーチェアエックスは、その構造へのこだわりもさながら、美意識の高さにおいても特別な椅子だという。一般的なパイプの多少の傷は、研磨やメッキ塗装を施すことで補修が可能だ。一方のニーチェアエックスは、パイプの過剰な光沢を避けてマットな仕上がりのヘアラインを採用しており、曲げ加工の際に金属同士が擦れて生じた小さな傷も修正が効かない。そのため、生産の担当者たちは金型にテープを巻いてパイプが直接触れないようにするなど工夫をしながら、その審美性を支えている。「直接お客さんが触れる場所ではないかもしれないけれど、この椅子の美しさを左右する大切なパーツだと思っているので」。

ステンレス板を円筒状に加工し、つなぎ目を溶接することでパイプを成形する。曲げ加工の際には穴の内部を目視で確認することで、脚部の内側に溶接跡を向け、フレームの美しさを損なわぬよう工夫がなされている。

“「ニーチェアエックスを完成させるのはお客様」
人の目、人の手で支える安心と安全”

そうして完成したフレームは、組み立て部門に。ニーチェアエックスは、シートパイプと脚パイプ・シート・肘かけ・ネジ・紐といった6つのパーツがそれぞれ分解された状態で小さく梱包して発送される。使う人が自ら組み立てて完成させる楽しみがある一方で、部品不足や付け間違いが思わぬ事故につながりかねない。

作業台には、辺り一面を囲む数十種類もの確認表、ネジ1本単位で管理される手作りの部品ケースなど、確認ミスや作業漏れを防ぐための工夫が徹底されている。これらはどれも担当者たちのあいだで生まれたアイデアで、改善点が見つかる度、日に日に増え続けているという。

担当者はみな「どれだけ機械化が進んでも、最後に頼りになるのは人の目、人の手」と胸を張る。工場が独自に培ったノウハウと工夫、徹底した安全意識に支えられ、ニーチェアエックスは今日もそれを心待ちにする人の元に届けられる。